犯人当て$「バランス$うさぎ$天使」$-ふりかえり


2025/09/09  火曜日
犯人当てか?これ……。
執筆期間は春休み~文フリ東京40前夜。メモアプリのバックログを確認するに、タイトルを思い付いたのが3月29日らしい。 書いてから約半年。悶絶しながら読み返してる。 問題編
解答編
書くのめっちゃ難しいですねミステリ。"仕掛けにも手続きにも自信がみじんも持てない犯人当ては執筆のモチベーションを保つのが辛かった"(当時のメモより)。 プロットに起こした時点からあちこち暗雲が見えていたものの結局大枠の改変はしなかった……できなかった。プロの作品裏話とか読むと草案と完成品との距離にびびる。引き返す能力は頭の柔らかさだろうか。 たとえば二人部屋システムがこんなに面倒だとは思わなかった……草案の時点で気付きたかった。一方が出かけると相互監視の状況が崩れてもう一方も同時に自由になる点がかなり不自由で、また所持品の小物も簡単に共有できてしまうのもやりづらかった。 不備がありそうだな……と思いながら設定したロジックは、やっぱり基本的に通らなかった。直感に反するけど通るロジックはカッコいい。直感に反するしやはり通らないロジックを忖度で通してもらう感じの問題編だった。 "屋上の(外→内の)鍵"や"高所恐怖症"は締切直前に加えた記憶がある。足跡と雪のパターンを検討するうちに不都合なパターンが1個ずつ見付かって、それらのケアのためだけに足した設定のはず。真相に影響しないことは確かめたけれど、推理の過程はどう変わっただろうか……? "時間"が一番まずかったよなあ…… 推理の過程といえば、当初のコンセプトでは「6人の容疑者がそれぞれ独立した5種類の手掛かりで1人ずつ除外する」シンプルなフーダニットを目指したはずだった。執筆目的の一つが、弊サークルへの犯人当て(を書く)文化のプロモーションだった。 今後弊サークルで犯人当てを作りたい人がいたときに、色々な意味で参考にしてもらえるようなものを作りたかった(のに……) 証言の信憑性が発言者に依存するせいで結局数珠つなぎの順路ができてしまった。まあ、証言をいったん全部採用して解いてくれれば(2)大問2からでも加点はできるし……。 アイデアの貯金が赤字になった。手掛かりのアイデアも叙述もホワットダニットも親父ギャグもほぼボツなく全投入した。 ……そう、フーダニットの手掛かりとストーリーの伏線とが区別不可能に混在しているのですよね。 大問題です。すみませんとしか言えない…… 日常系大好きです。ほんとすみません。兎も愛してます。本当に…… 不備だけはありませんように…… ——雑記—— ・これ北山猛邦「妖精の学校」ですか?→ はい…… ・"リボンの結び方"って白井智之の某長編ですか?→ ええ、はい…… ・綱渡りネタを思い付いたのって某アンソロの読書会ですよね?→勘弁してください…… ・"知る機会がなかった"ってどうやって使うんだ 同じ屋根の下にいて知りうる機会が全くないなんてことあるのか……? ・耳の"数え上げ"、最近指摘されて気付いたけど意味をなしてないですね 答えさせるべきは"XXが多数派"の情報だったのだろうか 決まったらカッコイイはずなので忘れた頃に再挑戦したい ・視点人物・探偵役の交代はずっとやってみたかったことで、今回は集団行動が多かったため無理なく行えた。語り手にない知識を持っている(異世界本格ってこれか?フーダニットに絡められれば良かったのだが……)ので、解決編でところどころスムーズになって嬉しかった。作劇上でも成功したと思う。 ・印刷の数日前まで、登場人物の名前は「A」、「B」、「C」、……「F」だった。 解いていただくものなので、字面においても響きにおいても混同しにくいように、頭文字や末尾字や文字数をばらけさせ、母音・子音・濁音などの組み合わせをなるべく多様にしたり、"どれだけ由来や似た語を連想しやすいか"に幅をもたせたり……。 容疑者たちの名前にはざっくりルールがあって、"広い意味での消耗品、つまり短い寿命を持つものエフェメラ" を表す単語が元になっている。bubble、comet、dew……はわりとまんまで、逆にflickerはもじりすぎて原形が残らなかった Aliceは非常に重い文脈のある名前だが、今回はこれ以外になかっただろうと思う(『不思議の国のアリス』自体との符合はわずかで丁寧なオマージュなどでは到底ないです) ・ダブル(n重)ミーニング、親父ギャグにハマっていた。今もだが。 三題噺てきに単語を選んで書き始めたのですが、バランスは多義語で、姿勢制御のことや天秤のことに加え、理科系の人の方言で「系が平衡状態になる」ことを「バランスする」と言うそうなんですよね 大オチが通じない可能性 ・バラうさの"青春"、期限があり、外から見て快く、かつ当事者にとっても失うことを恐れるのが自然である……ようなものを考えたとき一つしか思い付かなかったから消極的に仕方なく採用したけど、読んでくれた人の8割が青春の話だったと言ってくれたのでマズったと思った みな青春好きすぎる(あるいは嫌いすぎる) 三次元なまみの人間で二次元日常モノを発生させるための教義と、その巨大な障壁を書いたつもりでした 凡夫たちと優等生と狂信者が出てくる。 障壁は、天使ならざる(腹黒いってことじゃないよ)内心があること、そしてそれが我々の目に曝されること。ただし、ふだん上位存在?の視線を意識する人はいないはずで、作中の教えでも後者には触れていないらしい。むしろ解決編の探偵役である狂信者が狂信者である所以は、後者=理由付けなしに教えを受け入れて、自他の前者を矯めようと志すところ ・フィクションの人物はさまざまな場所で過ごしていますが、小説には特に明示的に、一人称の地の文という恐ろしいものがある。内心は本来唯一のプライベートである ・永遠を体現するフィクションにあるはずのないものを我々が見出すとき、すべては台無しになる。 ・これは駄洒落ですが、三次元の視点に気付いてしまったがゆえに、犯人の凡夫は雪密室のトリックを思い付いた。みたいな 狂信者は作中で完結した論理で言い当てた ・つまり、結局、すべての罪は我々にあるのではなかろうか………… (思い付きしだい加筆するかもしれません)

  #works  #ミステリ 

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